「建設業許可を取りたい!」
「法人成りのタイミングを迷っている...」
「許可と一緒に会社をつくるのを手伝ってほしい!」
行政書士をしていると、こういった相談をいただくことも多々あります。
「許可」も「法人設立」も、いわゆる行政書士の業務だからですね
※登記は司法書士さんの独占業務です
ということで、今回のブログは「法人成り」について、取り上げてみたいと思います。
「法人成り」とは、個人事業から法人(株式会社や合同会社)に成ることですね。
事業を営む上で、一つの目標にされている方もいるのではないでしょうか。
この記事を読んでいただいた個人事業の社長さんで、法人成りについてご興味があれば是非ご連絡ください。

<法人化を検討するポイント>
【建設業許可に関する記事は、以下を参照】
・建設業許可を取るための基本については ➡ こちら
・経営業務管理責任者とは? ➡ こちら
・営業所技術者(旧:専任技術者)とは? ➡ こちら
・【意外と重要】許可に必要な事務所要件 ➡ こちら
法人成りを検討するきっかけとして、まず挙げられるのが 「税金面のメリット」 です。
個人事業として順調に売上が伸び、利益が増えてくると、想像以上に 所得税の負担 が重くなるタイミングが訪れます。
■ 所得税は“累進税率”だから、儲かるほど税率が上がる
個人事業主の所得税は、利益(所得)が増えるほど税率が高くなっていく仕組みです。
控除後の所得が 900万円・1,000万円・1,200万円…と増えてくると、税率が33%・40% という世界に入っていきます。
一方、法人税は ほぼ一定の税率 で、利益が800万円以下の部分は中小企業なら約15%台、
800万円を超えた部分も約23%程度です(別途、住民税・事業税などはありますが、累進ではありません)。
つまり…
利益が大きくなるほど、個人のままより法人化した方が、手元に残るお金が増えやすい
という構図が生まれます。
■ 節税の自由度が大きくなる
法人化すると、個人事業では使いにくい節税策が使えるので、利益調整の選択肢が広がります。
たとえば…
社長自身に役員報酬を支払うことで、個人の所得税と法人税をバランス良く調整できる
家族を従業員として社会保険に加入させ、給与支払いが柔軟にできる
生命保険や出張旅費規程など、法人ならではの経費処理が可能
決算月を自由に設定できるので、繁忙期と納税時期をズラせる
など、運用によっては税負担の最適化がしやすくなります。
■ 法人化の目安
もちろん業種や経費の割合にもよりますが、一般的には次のようなラインが法人化の一つの目安です。
課税所得が500万円を超え始めた
事業が安定し、今後も増収が見込める
毎年、所得税が思った以上に高く感じるようになってきた
特に建設業は売上規模も大きくなりやすく、規模拡大とともに税金負担が増えるため、法人化のタイミングが重要になります。
建設業では、元請からの要請が法人成りや建設業許可を検討する大きなきっかけとなることがよくあります。
最近は特に、元請側がコンプライアンスを重視しているため、
「個人事業のままでは請けられない工事が増えてきた」
という声も多く聞かれます。
■ 一定額以上の工事は、建設業許可がないと受注できない
元請企業のほとんどは、1回の請負金額や工事規模によって
「許可業者であること」
を条件にしています。
特に以下の状況では、個人事業では限界が来やすいです:
500万円(税込)以上の工事を任されるようになってきた
元請の社内ルールで『法人でないと取引不可』と言われた
元請の監査(法令順守チェック)が厳しくなった
こうなると、法人化と建設業許可取得は避けては通れません。
■ 個人事業のままでは「信用力」で不利になる
元請企業から見ると、法人の方が以下の点で信用を置きやすいという現実があります。
決算書が整っていて事業の実態が把握しやすい
社会保険加入など法令遵守の姿勢が確認しやすい
組織としての継続性があると判断される
請負リスクが少ない(事故・クレーム時の対応も含む)
こうした理由から、元請が「法人化してほしい」「許可を取ってほしい」と求めるのは珍しくありません。
■ 元請との取引を広げたいなら、法人化は“ほぼ必須”
法人化+建設業許可があることで、元請からの紹介や、受注額の大きい仕事につながるケースが一気に増えます。
実際、
「法人化した途端、仕事の幅が広がった」
「許可を取って、単価の高い工事を任されるようになった」
という相談者もたくさんいらっしゃいます。
もし現在、
「元請から言われたから急いで法人化したい/許可を取りたい」
という状況であれば、かなり“適切なタイミング”にいると言えます。
法人成りを考えるうえで、意外と見落とされがちなのが 「社会保険(社保)」 の問題です。
建設業の場合、元請・下請の関係でも社会保険加入が厳しくチェックされるようになってきており、社保に未加入のままでは仕事を受けにくい時代になっています。
■ 個人事業でも「従業員5人以上」で社会保険の加入義務が生じる
まず基本として、建設業は 社会保険の強制適用事業所 に該当します。
つまり、
個人事業であっても、従業員が5人以上いれば社会保険(厚生年金・健康保険)の加入義務が発生する
というルールです。
※パート・アルバイトも、要件を満たせば加入対象です。
「個人事業だから社会保険は関係ない」と思っている方は要注意です。
■ 法人化すると、従業員が1人でも社会保険が“必須”
法人になると、さらに基準が厳しくなります。
法人は従業員が何人であっても、社会保険の加入が義務
社長1人の会社(いわゆる“ひとり法人”)でも、基本的には社保加入が必須になります。
これは多くの方が見落としているポイントで、
「法人になった瞬間から社会保険が必要になる」ということを知らずに後から負担を感じるケースも多いです。
■ 元請のチェックが厳しいため、社保は“実質必須”の時代
ここ数年、建設業界全体で社保加入の徹底が進んでいます。
元請企業は、一次下請・二次下請に対しても次のような確認を行うケースが増えています:
社会保険加入状況
労働保険(労災保険・雇用保険)の加入状況
就業規則や労働条件の整備
建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録状況
特に、元請が大手の場合は 「社会保険未加入=取引できない」 という運用が一般的になりつつあります。
■ 法人成り+社保加入は、今後の取引継続のためにも重要
社会保険加入の負担はあるものの、社保加入済みの法人は元請からの信頼が高まり、
結果として 継続的で安定した受注につながりやすい というメリットがあります。
「今後も元請との取引を続けたい」
「大きな工事を受けられる体制にしたい」
という事業者の方には、法人化+社保整備は事実上の必須条件となってきています。
今回は、「法人成り」について解説しました。
当事務所では、建設業の許可取得はもちろん、法人を作りたい方のサポートも行っております
ご質問にも丁寧に対応しております。以下のフォームよりお気軽にお問合せください。